「今あげているキャットフードは愛猫にとって安全なの?」
食の安全が声高に叫ばれている昨今ですが、ふとした折に疑問に思った方も多くいらっしゃると思います。
例えば「値段が安い」「近所で売っている」「ウチの猫はこれしか食べない」「ペットショップで与えられていたのでそのままずっと」など、やむを得ない事情で現在のフードを選択しているということもあるかと思います。
それでもときには「この選択は間違ってないかな?」と振り返ることもあるかと思います。
どんなことを基準にしてキャットフードを選ぶとよいのか?
とても大切なその部分に迫ってみたいと思います。
安全なキャットフードとは?
今、ご自宅のフードボウルに盛られたカリカリは、安全なキャットフードですか?
「は?うちのキャットフードが危険だって言いたいの?」とお思いになった方もいらっしゃることでしょう。
まずは猫の健康にとって好ましくないキャットフードについて原材料の点から説明していきます。
愛猫に食べさせているフードの成分表示がわかるように、キャットフードのパッケージをお持ちのうえ、お読みいただければと思います。
「この表示はどのような原料なのか?」ここでは、その項目の意味について解説したいと思います。
まずは、それぞれの言葉の意味を解説していきたいと思います。
「4Dミート」「家禽副産物、肉副産物」「ミール、オイル」
4Dミートとは
「Dead(死んだ動物の肉)」「Dying(死にかけの動物の肉)」「Diseased(病気の動物の肉)」「Disabled(障害のある動物の肉)」それぞれの単語の頭文字Dを取って「4Dミート」と呼ばれます。
これらを見ると、飼い主としては、なるべく愛猫に与えたくないと思うこともあるでしょう。
日本国内においては、基本的に4Dミートは人間の食卓に上ることはありませんが、ペットフードの原材料として使用されることはあります。
原材料として使用されていても、キャットフードの原材料表示に「4Dミート」という記載が見られることはありません。
家禽副産物、肉副産物とは
肉副産物は肉そのものではありません。
「肉となる部分以外の、精製されていない組織」を肉副産物と言います。
具体的には食肉となる段階で出てくる、脳、胃腸、脾臓、腎臓、肝臓、肺などの内臓と、血液、骨です。
この部分が猫にとって悪い原料となりうるのかというと、必ずしもそういうわけではなく、貴重な栄養源になるとの意見もあります。
ただし、粗悪なペットフードには、本来使用されるはずのない毛や羽根、糞便などが含まれている可能性もあります。
ミール、オイルとは
食肉処理の業界において、食肉を処理する際に発生する直接食用にできない部分を集めて油脂を搾り出す工程の事を「レンダリング」と呼びます。
「オイル」はレンダリングを行った際に出る油脂のことで、「ミール」とは、この油脂にした後の搾りかすを集めて肉骨粉としたものです。
「ミール」とは「挽く」という意味で、肉骨粉となったものは主にペットフードに利用されています。
レンダリング業者によると、鶏を原材料としたものを「チキンオイル」や「チキンミール」、牛を原材料としたものを「油脂」や「牛の肉骨粉」、豚を原材料としたものを「油脂」や「ポークミール」、魚を原材料としたものを「魚油」や「魚粉」と呼びます。
かつては、ペットフードの原材料として人間があまり利用しない部分を有効利用することが優先されたため、ペットフードの原材料として積極的に利用されてきました。
安価なキャットフードを求める一定の需要もある以上、これらの肉がキャットフードに混ざっている可能性があることは念頭に置くべきかもしれません。
どうしてもこれらの肉が混ざったフードを食べさせたくないという場合は、ヒューマングレードのフードを選ぶ必要があります。
ヒューマングレードとは、人間が食べることのできるレベルの食材を使用しているという意味です。
香料、着色料、酸化防止剤などの化学合成物質
日本においては、キャットフードだけでなくペットフードの安全確保を図るために、平成21年6月から「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法)」が施行されました。
これにより、製造メーカーにおいてはキャットフードに加えられる添加物について、何を使っているのかをパッケージに表示する義務があります。
では、キャットフードにはどのような添加物が添加されるのでしょうか。
香料
その名の通り、フードに香りづけをするために加える添加物です。
人工的に合成された香料と、原材料から抽出される香料があります。
猫は色を識別する能力が低く、視力は人間の10分の1程度です。
このために、猫は見た目よりも匂いで食べものの善し悪しを判断していると言われています。
人工的な香りを嫌がる猫ちゃんもいるでしょうが、キャットフードに付いている香料は、猫の食いつきを良くするために添加されるものです。
着色料、発色剤
フードに色を付け、鮮やかにし、美味しそうに見せる添加物です。
化学合成された着色料と原材料から抽出した着色料がありますが、化学合成されたものは猫のみならず人間にとっても有害なものがあるので注意が必要です。
前述の香料でも触れましたが、猫は色を識別する能力が高くありません。
人間は、光の三原色である赤・青・緑を識別することで物を見ていますが、猫はそのうちの赤を識別する能力が低いと言われています。
したがって、本来色を着ける必要がないキャットフードに色を着けるのは、飼い主である人間に対して美味しそうに見せるために添加しているものと考えられます。
酸化防止剤
キャットフードに含まれる脂質は、空気に触れると酸化し、過酸化脂質となります。
この過酸化脂質は動物の体内に入ると、さまざまな病気の原因になると考えられています。
そのため、フードの酸化を防ぐために加える添加物が酸化防止剤です。
酸化防止剤には、合成されたものと、天然由来のものがあります。
中でも化学合成されたものについては、猫に与える際に注意が必要なものもあります。
保存料
フードの中にいる細菌の増殖を抑制し、変質や腐敗を防ぐために加える添加物です。
殺菌する作用はありません。
お菓子、ソーセージ、漬物などの加工食品に多く使われている添加物です。
食品添加物として添加が認められているものではありますが、猫に与える際に注意が必要なものがあります。
食物繊維、ビタミン類、アミノ酸、核酸、ミネラル
原材料となる食品を加工しただけでは必要な栄養素の量に達しない場合に、これらが添加されます。
ペットフード業界では、AAFCO(米国飼料検査官協会)の基準を満たすために添加しています。
食物繊維については、猫が飲み込んだ毛を出しやすくしたり、胃腸のはたらきを促すために加えられます。
参考:ペットフードの安全関係(ペットフード安全法 事業者のみなさま向けページ):農林水産省
穀類などの原料
近年、猫を飼っている人の間でも「グレインフリー」や「グルテンフリー」という言葉を耳にすることが多くなりました。
「グレインフリー」とは穀物不使用という意味ですが、ペットフードにおける「グレイン」とは主に、米(イネ)、小麦、トウモロコシを指しています。
「グルテンフリー」とは、小麦などに含まれるタンパク質のひとつである「グルテン」を含んでいないことです。
この、グレインフリーや、グルテンフリーのフードを与えることによるメリットのひとつは、猫の消化器官に負担をかけにくいということです。
本来肉食である猫は、草食動物と比べると腸の長さが短く、肉以外の食物を消化するのが得意ではありません。
また、もうひとつのメリットは小麦アレルギーを持つ猫にも安心して食べさせられるという点です。
人間の場合もそうですが、小麦アレルギーの原因となるアレルゲンは、小麦に含まれているグルテンです。
ただし、猫にも少量の穀類を必要とする考え方もあり、グレインフリーであるから良いとは一概に言いきれないところはあります。
またグレインフリーを謳っているフードでも、どの原材料までを「グレイン」とするかの線引きは曖昧で、はっきりと決められていないのが現状です。
ただし、パッケージの原材料表示を見たときに穀類が先頭に記載されているキャットフードについては、注意が必要だと思われます。
原材料表示の先頭に記載がある原料ほど含有量が高いという意味なので、グレインが先頭に記載されているキャットフードは、かさ増しのために多くの穀類を使用しているからです。
本来肉食である猫にとって最も必要とされる栄養素は、肉や魚に含まれる良質なタンパク質であるという点とあわせて理解しておきましょう。