今や数多くのキャットフードが販売されていますが、みなさんは何を基準に購入する商品を選んでいるでしょうか。
「テレビのCMでよく宣伝されている有名ブランドだから」
「安くてボリュームがあるから」
「ネットの口コミで高く評価されていたから」
など、選ぶ基準はさまざまだと思います。
しかし、愛猫のことを考えてキャットフードを購入するのであれば、上記のような基準で選ぶのはおすすめしません。
では、何を基準にすべきかですが、それはズバリ、「原材料表」と「成分表」です。
原材料表と成分表を見れば、高品質で猫の健康にいいキャットフードかどうかをだいたい判別することができます。
というわけで、ここでは原材料表や成分表の見方について解説します。
キャットフードの原材料表の見方
キャットフードのパッケージには、必ず原材料表が記載されています。
言わずもがな、これにはそのキャットフードを製造する際に用いた材料が細かくまとめられています。
そんな原材料表は、キャットフードの安全性を見極めるための重要な指標です。
愛猫が1日でも長く健康的に生きてくれることを願うのであれば、必ずチェックしなければいけないポイントといえます。
しかし、「原材料表の何を見れば安全性がわかるの?」という方もいるかもしれません。
そんな方のために、ここでは原材料表にはどんなことが書かれているのか、まとめてみました。
原材料表の表記の順番には意味があった
原材料表には、使用されている材料の名前がびっしり書かれています。
書かれている材料の数が多く、どんな材料なのかわかりにくいものも多いことから、流し読みでザッと確認する程度の方もいるのではないでしょうか。
しかし、原材料表に書かれている材料やその表示順は、キャットフードの安全性を図るための重要なポイントです。
キャットフードを購入する際は、必ず入念にチェックしましょう。
よく使用されている材料については後述します。
まずここで注目していただきたいのは、原材料の「表示順」です。
原材料表示の順番には意味があり、含有量が多いものから順に記載されています。
つまり、そのキャットフードにおいて、一番左上に記載されている材料が最も多く含まれているということです。
たとえば、猫がうまく消化できない穀物(玄米、小麦、とうもろこしなど)が最初のほうに書かれている場合、「このキャットフードは猫にとって粗悪な商品である」と判断できます。
キャットフードの原材料で代表的なもの
原材料表に記載されている材料は、主に「肉類」「魚」「穀類」「野菜」「フルーツ」「添加物」の6種類に分けることができます。
これらの材料について、それぞれ特徴や代表例を見ていきましょう。
肉
キャットフードの中には、肉類を主原料としているものが多くあります。
ここでいう肉類とは、牛肉や鶏肉(ニワトリ、七面鳥、ダックなど)、馬肉、ラム肉、鹿肉、ウサギ肉といったものです。
いずれも猫の成長、体作りに欠かせない動物性たんぱく質を多く含んでいます。
とはいえ、同じ肉類の材料であっても特徴は異なるので、愛猫に合ったものを選んであげましょう。
たとえば、牛肉には「高カロリー」「必須脂肪酸(リノール酸、アラキドン酸など)の含有量が多い」といった特徴があります。
成長期の子猫に特におすすめです。
また馬肉は、低カロリーかつ高たんぱくという特徴が挙げられます。
太り気味の猫、運動不足になりやすい完全室内飼いの猫におすすめです。
ミートミールとは
動物性たんぱく質を多く含む肉類は、猫にとって必要不可欠な材料です。
しかし、同じ肉類でも摂取させるのがあまり好ましくないとされるものもあります。
それが「ミートミール」です。
ミートミールとは、食肉加工をした際に出たクズ肉、副産物をまとめて粉状にしたものをいいます。
食肉と比べると非常に安価なため、動物性のタンパク質源として使用されます。
ものによっては副産物として眼球や骨、鶏の羽毛、クチバシなどを含んでいることもあるため、一般に低品質の材料というイメージが広まっています。
ただし、ミートミールすべてがそうというわけではなく、一概に粗悪なものとは断言できません。
ペットフードの栄養基準、ラベル表示などについて取り締まっている米国飼料検査官協会(AAFCO)は、ミートミールを材料や栄養素の含有量にあわせて分類しています。
今回は、その中から「ミートミール」「ミート&ボーンミール」「ミートバイプロダクツミール(ミート副産物)」の3種類を解説します。
①ミートミール
血液や蹄、毛、角、胃などを精製したもの。
カルシウムの含有量がリンの含有量の2.2倍を超えていないもの。
ペプシン(胃液に含まれる消化酵素)によって消化できない残留物の含有量が12%以下であり、なおかつ精製されたものに含まれるペプシンで消化できない粗たんぱく質が9%以下のもの。
②ミート&ボーンミール
ミートミールの精製に使用される材料に加えて、骨も含んでいるもの。
少なくともリンを4%含んでいるもの。
その他の規定はミートミールと同じです。
③ミートバイプロダクツミール
汚染されておらず、なおかつ精製されていない動物組織(ミート部分は除く)。
具体的には脳や肺、肝臓、腎臓などを指します。
魚
キャットフードの中には、魚を主原料として用いているものもあります。
一口に魚といってもその種類は豊富で、それぞれに異なる特徴があります。
以下、キャットフードによく使用されている魚の特徴を紹介します。
①サーモン
飼い主さんや猫から特に人気が高いとされる魚。
良質なたんぱく質、血液をサラサラにする効果が期待できるDHA(ドコサヘキサエン酸)、豊富なビタミン類など、栄養たっぷりな点が人気の理由です。
②マス
良質なたんぱく質、脂質を多く含んでおり、またビタミンA、B1、B2も豊富に含んでいます。
③タラ
目や心臓、肝臓の健康維持に欠かせないタウリンを豊富に含んでいます。
④カツオ
魚の中でもビタミンB12の含有量がトップクラスで、カルシウムやビタミンD、アンセリンといった栄養素も豊富に含んでいます。
また、嗜好性が高く、猫の食いつきがいいことも特徴として挙げられます。
⑤マグロ
たんぱく質、DHA、鉄分、カルシウム、ビタミンDなど、健康維持に欠かせない栄養素を豊富に含んでいます。
また、低脂肪・低カロリーなので、太り気味の猫やシニア猫にも適しています。
穀類
最近はグレインフリー(穀物不使用)のキャットフードが増えつつありますが、それでも依然として穀物を使用している商品は多くあります。
キャットフードに使用される穀物として特に多いのが、「小麦」「米」「とうもろこし」です。
いずれも炭水化物を主成分としており、また植物性たんぱく質や食物繊維をはじめ、さまざまな成分を含んでいます。
主に食物繊維の摂取を目的に使用されるケースが多く、腸内環境の維持・改善に効果が期待できます。
ただし、穀物アレルギーのある猫には与えないように注意する必要があります。
また、猫は人間ほど穀物をうまく消化できないので、含有する穀物が多すぎるキャットフードはなるべく与えないことをおすすめします。
野菜
キャットフードの中には、野菜を使用している商品も多く見られます。
特によく使用されている野菜が、ジャガイモやサツマイモ、大豆などです。
ジャガイモはビタミンC、B6、鉄分、マグネシウム、糖質など、さまざまな栄養がたっぷり含まれています。
サツマイモには、食物繊維を豊富に含んでいるという特徴があります。
消化性に優れていることから、消化器官に衰えが見られる猫にもオススメです。
そして大豆は、植物性たんぱく質や食物繊維を多く含んでいるのが特徴。
脂質が低いので、摂取カロリーを抑えつつたんぱく質を摂取したいシニア猫に適しています。
ただし、大豆はアレルゲンになりやすい野菜でもあるので、その点は注意が必要です。
フルーツ
キャットフードの中には、フルーツを使用しているものも多くあります。
使用されるフルーツの種類はさまざまですが、その中でも特に多いのがベリー類です。
具体的にはクランベリーやビルベリー、ラズベリーなどが挙げられます。
眼や血管の健康維持に効果的なアントシアニン、豊富なビタミン類を多く含んでいるのが特徴です。
ベリー類は種類が豊富ですが、猫の健康に悪いとされるものはありません。
また、私たち人間がよく口にするフルーツも使用されていることがあります。
具体的には、ビタミンCを多く含み、疲労回復効果が期待できるオレンジ、老化や腸内環境の悪化を防ぐとされるリンゴなどが挙げられます。
そのほかにもさまざまなフルーツが使用されていますが、いずれも共通して酸化防止剤として使われることが多いようです。
添加物
ドライフードには、必ず酸化防止剤が使用されています。
これは空気に触れて酸化し、品質が落ちてしまうことを防ぐためです。
このほかにも、キャットフードによっては香料、着色料といった添加物が使用されていることがあります。
主に一定の品質を保つ、嗜好性を高めて食いつきを良くするといった目的で使われています。
そんな添加物には、自然由来のものと合成して作られた人工のものがあります。
いずれも同じ役割で使用されますが、なるべく自然由来の添加物を使用しているキャットフードを選ぶようにしましょう。
人工添加物の中には発がん性が認められているものもあり、猫の健康を損ねる危険性があります。
キャットフードの成分表の見方
キャットフードを選ぶ基準として、原材料表と同じくらい重要なのが成分表です。
成分表には、そのキャットフードに含まれている成分の内訳が記載されています。
特に、猫の健やかな成長に必要不可欠なたんぱく質をはじめ、5種類の成分についてまとめられています。
ここでは、そんな成分表の見方についてまとめてみました。
成分表の表記にはルールがある
ペットフードのパッケージに記載されている成分表ですが、その表示項目は「ペットフードの表示に関する公正競争規約施行規則」によって決められています。
具体的には、「たんぱく質」「脂肪」「繊維」「灰分」「水分」の5項目です。
少なくともこの5項目については記載が義務付けられており、その他の成分については必要に応じて記載されます。
ペットの成長に欠かせないたんぱく質、脂肪については最低栄養含有量(最低限含んでいるべき量)を保証する意味から、「○%以上」と記載されます。
一方、線維や灰分、水分については、多すぎるとカロリーが低下したり他の成分を必要量摂取できなかったりすることから、「○%以下」と記載されます。
良く「○○の基準を満たしています」と書いてあるけど?
ペットフード安全法によってパッケージに記載することが義務付けられているのは、「名称」「原材料名」「賞味期限」「事業者の指名又は名称及び住所」「原産国名」の5項目のみです。
つまり、当たり前のように記載されている成分表については、法律上必ずしも記載しなければいけないわけではありません。
成分表は、ペットフード公正取引協議会が定める「ペットフードの表示に関する公正競争規約」により、自主的な基準として記載されています。
ただし、「自主的」とはいえ、ペットフード公正取引協議会に属するペットフードメーカーが大半を占めているので、ほとんどのペットフードには成分表が記載されることになります。
ところで、ペットフードの表示に関する基準は「公正競争規約」に基づくものだけではありません。たとえば、米国飼料検査官協会(AAFCO)が設けている基準もあります。
ここでは、上記の各協会それぞれが設ける基準についてまとめています。
AAFCO基準とは
ペットフードの中には、「AAFCOの基準を満たしています」と謳うものがあります。
AAFCO(正式名称:米国飼料検査官協会)は栄養基準やラベル表示など、ペットフードにまつわるガイドラインを定める団体です。
AAFCOが設ける栄養基準値の一部をご紹介します。
①粗たんぱく質
幼年期・成長期/妊娠期・授乳期…最小値30.00%
成猫期・維持期…最小値26.00%
②粗脂肪
幼年期・成長期/妊娠期・授乳期…最小値0.9%
成猫期・維持期…最小値9.0%
③カルシウム
幼年期・成長期/妊娠期・授乳期…最小値1.0%
成猫期・維持期…最小値0.6%
④マグネシウム
幼年期・成長期/妊娠期・授乳期…最小値0.08%
成猫期・維持期…最小値0.04%
上記の成分のほかにも、40種類の成分についてそれぞれ栄養基準値が設定されています。
しかし、これはあくまでもAAFCOが独自に定めた基準であり、法的拘束力はありません。
このように、AAFCOは各成分について細かく栄養基準値を設けていますが、人工添加物をはじめ、猫の健康を損ねるおそれがあるものについては明確な基準を設けていません。
つまり、AAFCOの基準をクリアしているペットフードであっても、人工添加物を使用している可能性があるということです。
「AAFCOの基準を満たしています」と謳っているペットフードであっても、人工添加物の有無は確認するようにしましょう。
ペットフード公正取引協議会の基準とは
ペットフード公正取引協議会とは、国内のペットフードにおける栄養値や原材料などの基準を設ける任意団体です。
国内のペットフードメーカーのほとんどが、この協議会に参加しています。
ペットフード公正取引協議会もペットフードの栄養基準を設けていますが、これは100%オリジナルというわけではありません。
AAFCOの栄養基準値に基づいて設定しています。
例としてたんぱく質の栄養基準値を挙げると、子猫は最小値27%、成猫は最小値23%、シニア猫は最小値18%と定められています。
このほかにも、脂肪、線維、灰分、水分の4種類について、それぞれ栄養基準値が決められています。
キャットフードの成分代表的なもの
ペットフード公正取引協議会は、パッケージに成分表を記載することを義務付けています。
そのため、この協議会に属するペットフードメーカーが販売する商品には成分表の表示があります。
ただし、すべての成分について記載する必要はありません。
表示が義務付けられているのは、「たんぱく質」「脂質」「線維」「灰分」「水分」の5項目のみ。
そのほかの成分については、必要に応じて記載されます。
というわけで、上記5種類の栄養素についてそれぞれまとめてみました。
タンパク質
成分表の一番上に記載されているのが、「たんぱく質」です。
たんぱく質は猫の成長、健康管理に欠かせない栄養素のひとつ。
動物性たんぱく質と植物性たんぱく質の2種類がありますが、肉食動物である猫にとっては前者をより多く摂取することが大切です。
猫は健康的な体作りのために多くのたんぱく質を必要とするほか、エネルギー源としてもかなりの量のたんぱく質を?日消費します。
特に成長期真っ只中の子猫はなおのこと。子猫を飼っている方は、より多くのたんぱく質を摂取できるキャットフードを選ぶようにしましょう。
ただし、多くのメーカーは、動物性たんぱく質と植物性たんぱく質の合計をパッケージに表示していることに留意する必要があります。
肉類を主原料としているキャットフードであっても、表示されているたんぱく質の数値すべてが動物性たんぱく質とは限りません。
脂質
ペットフード公式取引協議会の定める規定において、「脂質」も成分表への記載が義務付けられている栄養素のひとつです。
脂質は、脳の働きを活発にしたり活動のエネルギー源になったりするため、猫にとって必要不可欠な栄養素といえます。
自然治癒力の増強や体温調節、血液の生成といった働きもあります。
しかし、だからといって過剰に摂取させるのは厳禁です。
野生の猫であれば1日の活動量が多いため、脂質を問題なく消費することができます。
それに比べて飼い猫は1日の運動量が少なくなりやすいため、脂質を過剰に摂取しすぎると肥満の原因になってしまいます。
成長期の猫にはある程度の脂質を摂取させる必要がありますが、成猫やシニア猫には少量で抑えることをおすすめします。
粗繊維
猫は肉食動物であり、特に野生の猫は植物を口にすることはありません。
そのため、猫の腸は食物繊維をうまく消化できる構造になっていません。
このことから、「キャットフードに食物繊維は不要」という考えが広まっています。
むしろ、食物繊維を摂取することで、消化不良を引き起こすのではないかと危惧されています。
確かに、食物繊維を過度に摂取させてしまうと、うまく消化できずに不調が生じるおそれがあります。
しかし、まったくもって不要というわけではありません。
食物繊維には胃腸の状態を良くする働きがあります。そのため、少量であれば下痢や軟便といった症状の改善に効果的です。
粗灰分
キャットフードの成分表に記載されている成分において、最も聞き慣れないのが「灰分」ではないでしょうか。
これはナトリウムやカルシウムなど、ミネラル成分のことを指します。
ミネラル成分を燃やすと灰が残ることから、この名前がつけられました。
灰分は、猫の健康管理に必要不可欠な成分です。
特にカルシウム、リン、カリウム、ナトリウム、マグネシウムは「主要必須ミネラル」といわれており、1日100mg以上の摂取が必要とされています。
ただし、マグネシウムの過剰摂取には注意が必要です。
マグネシウムは尿路結石を引き起こす原因のひとつ。
過剰に摂取するとそのリスクが高まるので、マグネシウムを多く含んでいるキャットフードはなるべく避けることをおすすめします。
水分
猫は、どちらかといえばあまり水分を取らない動物です。
しかし、水分は「体内の毒素を薄める」「排尿を促して毒素を排出する」といった重要な役割を担います。
体重4kgの猫なら1日に約250ml、5kgの猫なら1日に約280mlといったように、体重にあわせて1日の必要な水分摂取量が決められています(あくまで目安です)。
そんな必要不可欠な水分は、キャットフードに含まれています。
そのことは成分表を見ることでわかります。
ドライフードは10%以下、ウェットフードは75%以下の水分を含んでいるため、食事をするだけでも多少なりとも水分を補給することが可能です。
1日に摂取する水分量が少ないと、腎臓病や下部尿路疾患を引き起こすリスクが高まります。
飼い猫があまり水を飲まない場合は、ウェットフードや水分を多めに含んでいるドライフードを選んであげるといいでしょう。
まとめ
いかがでしょうか。
原材料表や成分表には、猫の健康管理のために欠かせない情報がたくさん詰まっています。
これらの表の見方を知ることで、愛猫に適した安全性の高いキャットフードを正しく選ぶことができるはずです。
最近は販売されるキャットフードの数がどんどん増えており、それにあわせて魅力的なキャッチコピーを謳う商品も増えています。
しかし、それだけで商品を選ぶのは早計です。
本当に品質の良いキャットフードを購入するために、原材料表や成分表を優先してチェックする癖をつけることをおすすめします。