ペットフードの開発技術向上により、現在は高品質のキャットフードが多く開発されています。
猫の成長段階、健康状態にあわせたものが開発されているので、どのような猫にも最適な食事を与えることができます。
使用する原材料の品質も昔に比べて格段と改良されており、中にはヒューマングレードの原材料を用いて作られたものも多く見られます。
しかし、いくらヒューマングレードの原材料を使用しているキャットフードだとしても、人間が口にしてはいけません。
ここでは、その理由についてまとめています。
食品衛生法とペットフード安全法の違い
私たち人間が口にする食品は、「食品衛生法」で定められている安全基準にのっとって作られています。
清涼飲料水や魚肉練り製品、生食用冷凍鮮魚介類など、食品の種類によって細かく規格基準が決められています。
この基準に合わない食品は販売することができません。
一方、ペットフードは「ペットフード安全法」で設けられている安全基準によって作られています。
もともとペットフードは、食品衛生法でいうところの“食品”に該当しないとされていました。
そのため、ペットの健康を害する成分が含まれる危険性が常に潜んでいました。
そこで制定されたのが「ペットフード安全法」です。
この法律の誕生により、ペットの健康を損ねるおそれがあるペットフードの製造・販売の禁止をはじめ、さまざまな規制がなされるようになりました。
食品衛生法とペットフード安全法は、一見すれば似ているもののように見えますが、その内容はまったくと言っていいほど異なります。
そのため、ペットフード安全法にてペットへの給与が認められている食品であっても、それが食品衛生法の定める安全基準をクリアしているとは限りません。
人間が食べられない食材を使用している
ヒューマングレードを売りにしているペットフードであっても、その中に含まれている原材料がすべて“人間が口にできるもの”というわけではありません。
ただ単純に「あまりふだんの食事に使われることのない原材料を使用している」というだけならまだしも、中には人間の食用としてはかなり粗悪なものが含まれていることもあります。
ヒューマングレードを謳っている商品だからといって興味本位で口にする、もしくは何かの拍子に口に入ると、体に何かしらの悪影響を及ぼす危険性も考えられます。
では、実際にどのような原材料が使用されているのか、気になるものをいくつか見てみましょう。
残留農薬の基準が甘い
ペットフードに使用されている原材料の中には、まだ農薬が残っている状態で加工されたものもあります。
この残った農薬のことを「残留農薬」といいますが、食品衛生法ではこの数値が厳しく決められています。
規定する数値を超える残留農薬が確認された食品については、原材料として使用することができません。
しかし、ペットフード安全法においては、残留農薬の基準が食品衛生法のものよりも甘く定められています。
キャットフードの場合、具体的には以下の通りです。
グリホサート…15ppm以下
クロルピリホスメチル…10ppm以下
ピリミホスメチル…2ppm以下
マラチオン…10ppm以下
メタミドホス…0.2ppm以下
たとえばグリホサートの場合は、食品衛生法では30~40ppm以下だと使用することができないとされています(原材料によって残留農薬基準値は異なります)。
また、ピリミホスメチルでは、1ppm以下と定められている原材料が多く見られます。
このように、ペットフード安全法によって定められている残留農薬基準値は、食品衛生法で定められている数値よりも規制がかなり緩いことがわかります。
さらに、ペットフード安全法では上記以外の残留農薬については規定がなく、極端な話をすればどれだけ含まれていても問題視されません。
こうした違いがあることから、人間がペットフードを口にしてはいけないとされています。
ミール・副産物が使用されている
ペットフードにおいて、よく問題視されているのが「ミール」です。
ミールとは、その原材料から搾り取った残りカスをまとめて粉末状にしたものをいいます。
たとえば、チキンミールであれば、本来人間が食べることのない鶏の眼やクチバシ、羽毛などをまとめて粉末状にしています。
通常、ミールは肥料として使用されるものであり、食用ではありません。
ペットフードには、このミールを内容量のかさ増しのために使用しているものがあります。
また、ペットフードに含まれていることがある「副産物」にも注意が必要です。
これもミールとほとんど同じですが、主に臓器を指して呼ばれることが多いようです。
もちろんこちらも食用ではなく、衛生面的にも決して良いものではありません。
動物たちにもできれば与えたくないものですが、人間の場合はなおのことです。
このミールや副産物が含まれていることも、人間がペットフードを口にしてはいけないとされる理由として挙げられます。
4Dミートが混入している可能性がある
残留農薬やミール・副産物に比べるとあまり知られていないかもしれませんが、ペットフードによっては「4Dミート」という原材料が使用されていることがあります。
この4Dというのは4つの“D”を意味しており、具体的には以下の通りです。
- Dead(死んだ動物の肉)
- Dying(死にかけている動物の肉)
- Diseased(何かしらの病気を患っている動物の肉)
- Disabled(障害のある動物の肉)
見てわかるように、いずれも衛生面的に良質な原材料とは断じて言えません。
しかし、ペットフードを口にしてしまうと、ものによってはこの4Dミールを摂取するおそれがあります。
人間の食用には禁止された添加物が認められている
ペットフードには、人間の食用として不適切な原材料ばかりでなく、人間にとって有害な添加物が使用されていることがあります。
その多くが発がん性のあるものであり、口にすることで健康を損ねるリスクが高まります。
ペットフードに含まれている添加物の量は、私たち人間に許容されている量の数倍、もしくは何十倍にも及ぶといわれています。
こうした危険性があることから、厚生労働省や環境省では指定添加物について「1日摂取許容量」が決められています。
もちろん摂取しないことが望ましいのですが、仮に摂取してしまうことになったとしても、この許容量を越えないように気をつける必要があります。
では具体的に、どのような添加物が人間にとって危険とされているのかを見てみましょう。
BHA・BHTが使用されている
ペットフードに含まれていることが多い添加物として、たとえばBHAやBHTが挙げられます。
BHAは正式名称を「ブチルヒドロキシアニソール」といい、ペットフードにおいて酸化防止剤の役割を担う添加物です。
ペットフードは開封後、空気に長く触れていると脂質が酸化し、品質が劣化する可能性があります。
ペットが酸化したペットフードを誤って食べてしまうと、胃腸症状をはじめとする不調を引き起こすリスクが高まります。その点、BHAを含んでいるペットフードであれば、酸化の進行を大幅に遅らせることができます。
BHTも同じように酸化防止剤としての役割を担う添加物であり、正式名称を「ジブチルヒドロキシトルエン」といいます。
これらの添加物はペットフードの状態を保つために必要不可欠ですが、その一方で発がん性のある人工添加物だという点は要注意です。
そのため、ペットに与えることもよしとしない声も少なくありません。
人間にとっても有害な添加物であることに変わりないので、決して口にしないようにしてください。
エトキシキンが使用されている
ペットフードに使用されることのある添加物として、エトキシサンがあります。
こちらも、BHAやBHTと同じように、酸化防止剤としての役割を担っています。
国内だけに限らず、アメリカやヨーロッパでも酸化防止剤として認められています。
しかし、このエトキシサンも毒性のある添加物なので、人間が口にしてはいけません。
有する毒性について明確にはなっていないものの、摂取することで遺伝毒性(細胞のDNAを傷つけ、突然変異を引き起こさせる毒性)を招くおそれがあるとされています。
特にBHAやBHTと併用している場合、危険性が高まるとされており、その合計量の上限値が厳しく決められています。
人間の基準値を超える亜硝酸ナトリウムが使用されている
ペットフードによっては、着色と殺菌を兼ねて亜硝酸ナトリウムを使用しているものがあります。
これは、私たち人間が口にする食品にも使用されているものです。たとえば、賞品として販売されているハムやタラコなどが挙げられます。
「人間が口にする食品にも使用されている」ということで、一見すると危険なように見えない亜硝酸ナトリウムですが、ペットフードの場合は人間にとって危険な存在となります。
上記のようなハム、タラコなどは、食品衛生法によって定められた量の亜硝酸ナトリウムが含まれています。
しかし、ペットフードに含まれている亜硝酸ナトリウムの量は、人間にとっての許容量をはるかに超えています。
また、特定の物質と一緒に摂取することで科学反応を起こし、強力な毒性を持つ発がん性物質を生成することもわかっています。
現に過去に行われた動物実験では、亜硝酸ナトリウムを長期にわたって摂取していたラットに胃がんが発見されたという結果が出たようです。
過剰摂取によって危険性が高まるので、口にしないようにしましょう。
加工過程で使用した添加物は記載義務がない
では、BHAやBHT、エトキシサン、亜硝酸ナトリウムが含まれていないペットフードであれば、「人間にとって有害な添加物は含まれていない」と言えるのでしょうか。
結論から言うと、答えはNOです。
ペットフードのパッケージには原材料表が掲載されていますが、使用されている添加物すべてが表示されているとは限りません。
原材料表には、原材料を含有量が多い順に計80%まで表示する必要があります。
しかし、添加物の表示についてはメーカーの任意とされています。
たとえば原材料の前段階の加工工程(下処理、調理など)において、腐敗した肉に殺菌剤を使用していたとしても、その殺菌剤を表示する義務はありません。
つまり、原材料表に表示されているもの以外にも、人体に有害な添加物が含まれている可能性があるわけです。
ヒューマングレードでも食べてはいけない
そもそも、「ヒューマングレード」とはどういう意味かご存知でしょうか。
これは、人間用の食品に使用されているものと遜色ないレベルの品質で管理された原材料をいいます。
あくまでも、人間が口にしているものに劣らない品質管理がなされているだけであって、人間の食用として加工されたわけではありません。
仮に人間が食べられる原材料が使用されているとしても、安易に口にしないようにしてください。
また、ヒューマングレードを謳うペットフードは今や多くありますが、これは各メーカーが自主的に公言しているだけに過ぎません。
ペットフード安全法により、何かしらの明確な基準が設けられているわけではない点に留意する必要があります。
まとめ
いかがでしょうか。
今やヒューマングレードを謳うペットフードが多く販売されていますが、だからといって人間が食べていいわけではありません。
衛生面が良くないもの、発がん性のあるものが含まれていることがあり、また原材料表に記載されていないだけで他にも健康に悪い原材料が使用されている可能性もあります。
そして、これは人間だけでなくペットに与える場合も、同じように注意しなければいけない点です。
体の大きい人間にすら害がある原材料が含まれているということは、体の小さなペットにとってはさらに危険度が増します。
愛猫に長く元気に生きてもらうために、キャットフードを購入する際はなるべくミールや人工添加物を含まないものを選んであげるといいでしょう。