キャットフードの安全性が問われる中、最近では手作りのキャットフードを与えている飼い主さんが増えています。
大切な家族が食べるご飯ですので、実際に手に取れる安心できる素材だけで作ってあげたいものですよね。
このページではキャットフードの手作りに関する注意をまとめてみました。
キャットフードの手作りは要注意
一昔前の日本なら猫のごはんといえば、猫まんまのような人間のご飯のおすそわけが中心でした。
それも一種の手作りご飯といえますが、ネギや塩分のように、人間のご飯は猫にとって有害なものが沢山含まれています。
手作りをするのであれば、自分たちのものとは別に、猫専用のご飯を調理するようにしましょう。
また、現在のキャットフードは総合栄養食とされ、非常に精密に栄養バランスを考えて作られています。
栄養素の計算なしに、やみくもに手作りに切り替えてしまうと、本来摂取すべき栄養素に過不足が出て体調を崩すことになりかねません。
しかし、手作りのキャットフードは上手に取り入れれば、非常に健康的な食生活を送ることができるものですので、正しい知識を持って与えるようにしましょう。
猫に与えてよい食材とダメな食材を知る
猫は体の構造や消化できる栄養素が人間と異なります。
そのために手作りキャットフードを作る上では与えるべき食材や与えてはいけない食材が数多くあります。
猫に積極的に与えたい食材
猫は完全な肉食動物ですので、野生本来であれば動物の生肉が主食になります。
しかし、最近の研究ではある種の野菜も猫にとって有益だということが分かってきました。
ここでは猫の手作りキャットフードにおすすめの食材を紹介します。
肉類
猫は2000万年前から食性が変わっていないと言われる生粋の肉食動物です。
肉食動物の歯は草食動物のように臼歯が発達していない代わりに、発達した犬歯を持ち、獲物の肉を噛み切り丸呑みするのに適しています。
肉は消化が悪いイメージがありますが、実はそうではなく、野菜や穀物など、食物繊維を食べるときのように咀嚼の必要がありません。
猫が食べれない肉は基本的にはなく、牛肉、豚肉、鶏肉、馬肉、羊肉と、何でも食べることができますが、栄養素が異なるので、手作りの際はどの肉にどれくらいの栄養素があるかを知った上で調理することで、バランスよく栄養素を補うことができます。
肉を与える際に注意したいのは寄生虫や細菌です。
特に豚肉や鶏肉は茹でるなど、加熱して与えるのが確実です。
チーズ
猫は乳糖を分解する「ラクターゼ」という酵素が少ないため、牛乳を飲むと下痢になることが多いのですが、チーズは乳糖がほぼ失われているので与えても問題ない食材です。
チーズはタンパク質、カルシウム、ビタミンが豊富に含まれているだけでなく、発酵食品であるため「酵素」を多く含んでいます。
ただし、チーズの種類によっては塩分が多く含まれているものもあるため注意が必要です。
腎臓病になりやすい猫にとって塩分の摂りすぎは非常に危険です。
人間用のチーズは塩分が多く含まれているものが多いため、与えるのであればカッテージチーズやモッツァレラチーズ、もしくはペット用チーズなど、塩分が抑えてあるものを与えるようにしましょう。
卵
タンパク質、脂質、ビオチン、ビタミンB2・B12、セレンなど、栄養素が豊富に含まれています。
加熱して与えることで、卵の持つ栄養素を満遍なく接種することができます。
生卵は白身に含まれる「アビジン」という成分がビオチンの吸収を阻害してしまうので、必ず加熱して与えるようにしましょう。
黄身は非常に多くの栄養素が含まれていますが、コレステロールも多く含まれているため与えすぎは不調の原因になってしまう場合があります。
卵に含まれるビオチンとアビジンは、強く結合する性質があり、卵焼きにしてしまうと加熱していてもビオチンの吸収力は落ちてしまいます。
与えるのであれば、ゆで卵や目玉焼きなどが良いでしょう。
魚類(青魚以外)
猫といえば魚というイメージがあるかと思いますが、実はこれは日本独特のイメージであることはあまり知られていません。
日本で猫がペットとして飼育されるようになったのは江戸時代で、この頃は庶民の残飯などを与えられるようになりました。
島国である日本では当時の人々の食生活は魚が中心であり、その魚を猫にわけ与えていたことが現在までイメージとして定着してしまったようです。
猫に与えて良い魚は赤身魚と白身魚です。
特に赤身魚のマグロは良質なタンパク質が豊富に含まれていますが、カロリーは高めなので、与える際には量に注意が必要です。
白身魚はタイ、カレイ、タラがありますが、赤身魚も白身魚も傷むのが早いため、基本的には加熱したものを与えるようにしましょう。
野菜類
猫は完全な肉食動物なので、基本的には野菜は与えなくても良い食材です。
しかし、近年の研究では、野菜の食物繊維が猫の健康にも良いということがわかってきました。
それもそのはず、肉食動物も草食動物を捕食する際に、草食動物の消化器官を食べることで、間接的に食物繊維を摂取しているのです。
猫が摂った方が良い野菜に大根、トマト、キュウリなどがあります。
水分を積極的に摂ってくれない猫にとって、90%以上が水分で構成されている大根は嬉しい野菜です。
トマトは肝臓やがん、肥満予防にも効果があるとされています。
キュウリも90%以上が水分でできている上、低カロリーで触感が好きな猫が多く、水を飲まない猫にとっては積極的に与えたい食材です。
与えてはいけない食材
猫に与えてはいけない食材には次にようなものがあります。
- ネギ類
- アボカド
- チョコレート
- コーヒー
- 酒(アルコール)
- 巻貝類
- イカ、タコ
- 青魚
- スパイス類
これらは与える量によっては猫にとって重篤な症状を引き起こすこともあるので特に注意がが必要です。
栄養バランスを考える
飼い主さんの手作りフードで栄養のバランスをきちんととるのは、実は簡単ではありません。
猫にとって必要な摂取量が判明していない栄養素もあるなど、毎日栄養バランスやカロリーを計算しつつ、細心の注意を払って手作りフードを続けるのは栄養士でも大変だったりします。
継続できなければ意味がありませんし、飼い主さんにとってストレスになってしまったら本末転倒です。
まずは週に一回でも、休みの日だけ手の込んだフードを作ってみるなど、ペース配分を考えた方が良いかもしれません。
また、一食の半分を手作りにしてみたり、ドライフードへトッピングするなど、始めやすいことから手を付けていくのもいいでしょう。
総合栄養食であるドライフードは純分な栄養がバランスよく配合されているので、トッピングでカロリーオーバーしないように工夫する必要があります。
味を付けない
塩やスパイスなどの調味料は猫にとってはまったく必要ありません。
特に人間が使っている調味料は塩分が多く、猫に対して毒であると言い切っても過言ではありません。
塩分の摂りすぎは腎臓に負担をかけ、泌尿器系の疾患を引き起こす原因となってしまいます。
そもそも猫は体内の尿を凝縮して排出するため、泌尿器系の病気にかかりやすいと言われています。
そのうえでさらに塩分濃度の高い食事で腎臓に負担をかけてしまうと、腎不全や下部尿路結石を引き起こしてしまうのです。
もし手作りフードの塩分濃度が気になるようであれば、「塩分測定器」で塩分をチェックしてから与えるのが良いかもしれません。
手作りキャットフードのメリット
手作りごはんの注意点などを説明してきましたが、それを見て面倒に感じた方も多いかと思います。
しかし手作りごはんには市販のキャットフードでは得られないメリットが沢山ありますので、ご覧ください。
飼い主が食材を把握できる
市販のキャットフードでは、どんな肉や野菜がどのくらい使われ、どんな添加物が入っているのかなどは、実際に目にすることはできません。
ですので、4Dミートのような動物の死骸や腐った肉を殺菌したもの、粗悪なミール、副産物などが混入していても、気づくことができません。
しかし、キャットフードを手作りすれば、すべて自分で手に取って確認することがでるのでとても安心です。
高タンパク低カロリーの肉を食材にしてダイエットレシピを考えてみたり、アレルギーになりにくい羊や馬の肉を食材にしてみたり、試行錯誤を重ねてレシピを考えるのは楽しいことでもあります。
また、何を与えたかを把握できるので、ちょっとした体調の変化にも気が付きやすく、アレルギーの発見にも役立ちます。
猫の好みに合わせることができる
どんなに栄養価の高いフードでもあっても、食べてもらえなければ意味がありません。
その点、手作りのフードには愛猫の好みに合わせることができるメリットもあります。
猫は個体によって好き嫌いが激しいことがりますが、食材の組み合わせによっても愛猫の好みは知ることができます。
例えば、肉は茹でると生の香りが飛んでしまいますが、猫は香りで食べ物を判断するのでトッピングする野菜の組み合わせでは好んで食べてくれたりします。
最初は大変かもしれませんが、愛猫のことを考えながら作るご飯は慣れてくれば非常に楽しい時間になるのではないでしょうか。
愛情たっぷりのご飯を与えられる
何も調理されてない状態の素材を厳選して手作りごはんを作ることで添加物を避けることもできますが、その安心感は市販のフードを与えるよりも遥かに高くなります。
何よりも、「愛情を込めることができる」のは手作りご飯の一番の醍醐味です。
ドライフードやウェットフードを皿に入れるだけでは味わうことができない、特別な愛情を愛猫に送ることができます。
水分補給ができる
水の少ない砂漠で暮らしていたリビアヤマネコの子孫にあたる現在の猫は、水をあまり飲まない傾向があります。
リビアヤマネコは少量の水分でも生きていけるように、「少ない水分でも尿を濃縮して排泄する」という能力を身に着けました。
しかし、水分が少ない状態が慢性的に続くことで、腎臓や尿路の病気に原因となりやすいという。弊害もあります。
現在の猫も水分をあまり必要とせず、少量の水分で濃い尿を排出します。
そのために自身の水分が不足している状態に対しては鈍感です。
高齢の猫や病気で腎臓が弱い猫などは、特に脱水症状を引き起こしやすいため、水分補給が重要です。
積極的に水を飲まない猫にとって、手作りごはんは水分を補給してあげるチャンスでもあります。
猫の大好きな肉や魚の茹で汁などを加えたり、そのまま与えることで、猫に必要な栄養と同時に水分も摂ることができます。
まとめ
生き物が健康に暮らしていくために食生活は大切な要因のひとつです。
手作りキャットフードには市販のフードにはないメリットがあるのも事実ですが、栄養バランスが偏らないようにするなどの知識も必要になってきます。
毎日与えるものだからこそ、バランスのとれた手作りフードでなければすぐに栄養は偏ってしまいます。
飼い主さんが猫のためと思って始めた手作りフードで猫の健康を害してしまうようでは本末転倒です。
手作りのキャットフードに少しでも心配がある場合は、無理をせず、普段はできるだけ安全で健康的なキャットフードを与えて、たまに愛情たっぷりの手作りキャットフードをふるまうのが賢明かもしれません。